遺産分割協議

はじめに
 遺産分割は,遺産の種類や性質,相続人の年齢や職業を考えて,相続人に遺産を分配することです。つまり,遺産の種類が,お金か,不動産か,宝石かなどの他,相続人が,高齢の妻か,幼い未成年の子供か,障害があるかなど,様々な事情を考慮して,遺産を分割することを求めています。
そのうえで,以下のように遺産の分割協議が行われると思われます。

遺産分割協議の手順
 ①遺言書の検索
  ・公正証書遺言の有無は,全国どこの公証役場でも無料で遺言検索システムの
   利用ができます。ただし,遺言者が存命中は遺言者のみ可能です。
  ・自筆証書遺言の有無は,法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合
   のみ,全国どこの法務局でも,手数料を納付して遺言書保管事実証明書の交付
   の請求をすることで,確認できます。
  ※上記の2つについて,お手軽に司法書士等にご相談ください。
 ②相続人の確定
  厳密には戸籍の調査が必要です。また,相続人に精神上の障害のある方,
  未成年者,行方不明者がいる場合,以下の手続きが必要となります。
  ・精神上の障害のある方については,成年後見人や保佐人などの選任の
   審判手続きが必要になります。
  ※成年後見制度は現在,より利用しやすくするための整備を国を挙げて行われ
   ており,近く,簡単で手軽に利用できる,障害者のための制度になると
   思います。
  ・未成年者については,特別代理人の選任の申立が必要になります。
  ※特別代理人の制度は,法律の整備が不十分との指摘があり,利用には
   注意が必要です。
  ・行方不明者については,不在者財産管理人の申立などが必要になります。
  ※上記(成年後見の制度,特別代理人の申立て,不在者財産管理人の申立て)
   について,お手軽に司法書士等にご相談ください。
 ③遺産の全体の確定,または,遺産分割の対象とする遺産の特定
  ・遺産分割協議では,預貯金だけや,とりあえず不動産だけなど遺産の一部を
   対象とした遺産分割協議をすることもできます。そして,遺産分割協議書も
   特定の不動産のみや,預貯金のみを記載して作成することができます。
  ・遺産分割協議の際,遺産全部を計算するときは,
   以下のことに注意を払う必要があります
   ①お亡くなりになられた方の療養看護などをした相続人いらっしゃる場合     ②遺言書に,生前にした贈与分や,遺贈を遺産分割の対象としない旨の
    記載がある場合
  ・遺産分割の対象となる主な財産は,以下のように分けられます。
   ①積極(プラス)の財産
    預貯金,不動産,動産,有価証券,貸付金,生命保険金,著作権,
    特許権など
   ②消極(マイナス)の財産
    住宅ローン,借金,税金,賃料,施設利用料,保証債務など
  ※司法書士等は,遺産分割協議書を,相続人全員の意向を受けて,
   作成することができるほか,遺産分割協議書作成のサポートも行っています。
   遺産分割協議書作成のページ
   遺産分割に争いのある場合は,弁護士さんに相談してください。
 ④遺産分割の割合と方法の決定
  誰が相続人で,分割する遺産が決まったら,いよいよ分割方法を決定します。
  分割方法はいろいろありますが,主なものは次の方法です。
  ・現物分割
   そのまま分配する方法です。
   たとえば,Aさんが3分の1,Bさんが3分の2などという方法です。
  ・代償分割
   ある相続人が遺産の現物を取得する代わりに,その他の相続人にその現物の
   相続分に応じた金銭(代償)を支払う方法です。
   たとえば,相続人Aさんが不動産を取得する代わりに,相続人Bさんは
   Aさんから,その不動産上に有していた相続分に代わる金銭をもらう方法です。
  ・換価分割
   遺産を売却して金銭にし,相続人間でその売却代金を分配する方法です。
  ※現物分割と代償分割と換価分割それぞれを組み合わせることもできます。
   たとえば,遺産が広い土地で,相続人がAとBのとき,土地の半分は売り,
   売却代金をAとBで分け,残った土地の4分の3をA,4分の1をBが取得し,
   AがBに残った土地の4分の1に相当する土地の価格を支払うという方法です。  ※もちろん,AとBで差をつけることも可能です。
   ただし,差をつけた場合は,相続税の割当ても異なってきますので,
   高額の遺産の場合は税務署または税理士さんに尋ねるのが良いと思います。
 ⑤遺産分割協議を行い,遺産分割協議書を作成します。
  以下,遺産分割協議書の形式面での注意点となります。
  ・遺産分割協議書には,相続人の署名(自署)と押印(実印)がある方が好まし   いですが,署名できない場合は,ワープロでの記名でもかまいません。
  ・同一の遺産分割協議書に,すべての相続人の署名押印がなくてもよく,
   内容が同じであれば相続人毎に遺産分割協議書を作成してもかまいません。
   これは,相続人がAとBで,内容が同じ文面の遺産分割協議書が2通あり,
   1通にはAさんの署名押印,残りのもう1通にはBさんの署名押印がある場合,
   その2通で1つの遺産分割協議書として有効です。Aさんが海外にいて,
   集まって遺産分割協議ができない場合などに用いられることが考えられます。
  ・遺産分割協議書が複数ページになるとき,各ページに契印が必要です。
  ・部数は,複数部作成し,各相続人が所持してもかまいませんし,一部作って
   代表者が保管し,他はコピーを所持するという方法もあります。
  ・作成した遺産分割協議書と一緒に印鑑証明書を官公署(税務署や法務局など)   に提出する際は,相続開始後に取得した印鑑証明書の方がよいです。
   ※法務局には不動産の相続登記,税務署には相続税の申告の際に提出します。
  ・前述のように,財産ごとに遺産分割協議書を作成することも可能です。